よくあるご質問『オーダーメイド枕で肩こりが治りますか?』

仕事柄『オーダーメイド枕を作ったら肩こりが治りますか?』という質問をよく受けます。

これは極めて難しい質問でして、一言で簡単に答えの出るような問題ではありません。この辺りに関して、元カネボウの化粧品研究員として『正しいことを正しく伝える』というスタンスで、出来るだけ分かりやすくご説明してみたいと思います。

枕は肩こりの治療器ではありません

どこかのお店で『この枕で肩こりが治りますか?』と聞いてみてください。この質問に対して、何の前置きもなくあっさりと

『治ります』

という答えが帰ってきたとしら、そのお店で枕を買うのはやめた方が良い・・・と私は思います。 なぜならそのお店は

・売るために誇大な表現をしている=ウソをついている
・正しい知識を持っていない=プロではない

のどちらかです。いきなり身も蓋もない書き方になってしまいましたが、実際そうとしか言いようがありません。

でもその一方で、当店でオーダーメイド枕を作られたことで

『ウソのように肩こりが楽になった』

という方もたくさんおられることもまた事実です。矛盾したことを言っているように思われるかも知れませんね(苦笑)これは一体どのように考えたら良いのでしょうか?

肩こりが起こる理由、それは『その上に重い頭が乗っているから』

平均的なヒトの頭の重量は『約6㎏』だそうです。

一口に6㎏と言ってもピンと来ないかもしれませんが、ボーリング場にある一番重い球16ポンド=約7.2㎏ですから、 あの重いボーリングの球に匹敵する重さが私たちの首の上には持っているのです。もしそれだけの重量を手(腕)で支えたとすれば・・・どれだけしんどいか?おそらく1時間も持ち堪えられないはずです。

ですから、私たちは全く自覚こそしていませんが、私たちの首と肩の筋肉は重い頭を支えるため、ものすごく頑張っている=筋力を使っているのです。

さて、もしボーリングの球を私たちの腕で持ち上げた時に、一番負担のかからない状態はどのような持ち方でしょうか?

答えは簡単です。
垂直(真上)に持ち上げた場合です。
傾ければ傾けるほどしんどくなるはずです。

 


このように考えた時、デスクワークの多い人が肩こりになりやすい理由も説明がつきます。
デスクワークをする時、姿勢は前傾になりやすいので、その分首や肩の負担が増しているのです。ですから肩こりの大きな要因として『姿勢』が挙げられます。『姿勢を良く保つ』=『まっすぐ立つ(座る)』ほど『肩こりになりにくい』というのは間違いなさそうです。

・・・とは言え、いくら姿勢を良く保ったとしても、首や肩は6㎏の重量を長時間支え続けているのですから、筋肉の内部に疲労物質が蓄積されていることは間違いありません。

それではその疲労物質はいつ取り除かれているのでしょうか?

・整体に行った時?
・サロンパスを貼った時?
・マッサージチェアにかかっている時?

ここで話をちょっと変えたいと思います。

ちょっと小難しい!? 『抗重力筋』のお話

『コウジュウリョクキン』読みます。

文字通り『“重力”に“抗”うための“筋”肉』です。

例えば『こんにゃく』を立てようとしても“くにゃくにゃ”で立ちませんよね。
でも同じサイズの『木の板』であれば立つはずです。

私たちの体も立つ時には、体幹部の筋肉が収縮して(硬くなって)立った状態を支える必要があります。座った時も、筋肉の使われ方は異なりますが同様です。

1)試しに立った状態(座った状態でも可)で、ご自分の腹筋を触って、その硬さをチェックしてみてください。
2)次に寝た状態で同じ筋肉の硬さをチェックしてみてください。

寝た時の方が筋肉が柔らかいことがお分かり頂けると思います。これは首や肩の筋肉でも同様です。

つまり抗重力筋とは、 立った時、重力の影響に抗ってその姿勢を保持するために働く筋肉のことです。脊柱起立筋(背筋)、腹直筋(腹筋)、大殿筋(お尻)、大腿四頭筋(ふともも)などが、代表的な抗重力筋として挙げられます。構造的に考えて、体幹部の筋肉のほとんど全てが抗重力筋ということになります(いわゆるインナーマッスルは除く)。そして首や肩の筋肉(僧帽筋や広頚筋など)も、広義の解釈としては抗重力筋に含めても構わないと思います。

・重いものを持つ時
・走る時
・腹筋を鍛える時
それらの運動に関係する筋肉が働いている=収縮していることを意識しているはずです。

その一方で立った時(座った時も含めて) 抗重力筋が働いている(収縮している)ことはなかなか意識しにくいと思います。

しかしながら昼間私たちが活動しているすべての時間で、抗重力筋は重力に逆らった状態を保持するために活動(収縮)しているのです。当然筋肉の中には疲労物質が蓄積されているはずです。

筋肉の疲労物質はいつ取り除かれるのか?

それでは先ほどの質問『筋肉の疲労物質はいつ取り除かれているのか?』の答えですが、それは
・整体に行った時でも
・サロンパスを貼った時でも
・マッサージチェアにかかっている時でもなく、

筋肉の疲労物質が取り除かれるのは夜眠っている時です。

私たちは夜眠る時、横になります。これには非常に重要な意味があります。この時、私たちの体は重力から解放されているのです。

もし立ったまま眠ろうとしても、抗重力筋に収縮の神経指令を送り続ける必要があるため、私たちの脳は活動を続けることになります。その 結局睡眠の質は大幅に低下します・・・というか、そもそも立ったままでは入眠できません。

寝姿勢が重要

ここまで書いたところで、冒頭の『枕で肩こりが治りますか?』という質問に対する答えは半分出ているのではないでしょうか。

先ほど申し上げた通り、 私たちの首や肩の筋肉は、私たちの重い頭を支えるために働いて(筋収縮して)います。当然筋肉の内部には疲労物質が蓄積されています。その疲労物質を取り除くのは横になって眠っている時です。

この時に重要になってくるのが『寝姿勢』。 首と肩の筋肉を最大限リラックスできる寝姿勢であることが重要です。

どちらの写真が首と肩の筋肉がリラックスできていると思いますか?

 

 

 

誰もが『下の写真(の方がリラックスしている)』と答えるはずです。
上の写真では見るからに首が下がってしんどそうですよね。
これでは疲労回復どころか、疲労蓄積ですよ(苦笑)

ここでは横向き寝の写真を例に挙げましたが、仰向き寝でも全く同様です。

枕の役割は『睡眠時の頭と首を支えて、筋肉が最大限リラックスできる理想の状態(寝姿勢)を保つ』こと

首と肩の筋肉のサイクル
昼間の活動時→重い頭部を支えることで筋肉の収縮→疲労蓄積
夜間の睡眠時→横になることで筋肉の弛緩→疲労回復

こういった疲労の蓄積→回復→蓄積→回復のサイクルがうまく回らなかった場合、つまり昼間の疲労が大きすぎるか、夜の回復が少なすぎる場合、いわゆる『慢性肩こり』という状態になります。

ですから、『枕が合っていない』人が『ぴったり合った枕』を使うようになるだけでこういった回復サイクルがうまく回るようになり『肩こりが楽になった』という場合も多くあるのです。

ただ私たちの体はあまりに複雑です。『肩こり』一つを取り上げてみても、他にいろいろな要素が複雑に絡み合っています。この記事では姿勢(昼間の姿勢、寝姿勢)、それに伴う筋肉の疲労、回復にフォーカスしましたが、

当然それ以外にも
冷えやストレスによる血流の問題
あるいは医学的な疾患が絡んでいる場合もあるでしょう。

そういった複雑な要素が絡んでいるからこそ
安易に『枕で肩こりが治る』といった表現は用いるべきではないと思っています。

それでも、 これまで詳しく書いてきた通り、私たちの体は眠っている時間に疲労を取り除いているのですから

『肩こり改善のために、体型に合った枕を使うことが、極めて有効な手段である』

ということは間違いのないところだと言えるでしょう。